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全国外国語教育振興協会(全外協)

経営者セミナー 浅野大介先生 『Society5.0・働き方改革・一億総活躍の社会と「未来の教室」』

日 時: 2019年6月16日(日)15:00~16:30
会 場: アルカディア市ヶ谷 「妙高」
講 師: 経済産業省 サービス政策課長・教育産業室長 浅野大介 先生
概 要

Society5.0

 現在の社会構造改革の政策にSociety5.0があります。データとAIの力を借りて、社会構造や産業構造、個人の生活を大きく変えるという第4次産業革命です。Society5.0で目指しているものは、人知だけでは成しえないことをデータとAIの助けを借りてやっていこうというものであって、AIを人間が操るという世界をどう作っていくかということになります。
 Society5.0に向かう社会というのは、人工知能やデータの開発と活用の競争。ここに富の源泉が埋まっています。人間に求められるのは、課題設定力と色々な分野の知恵をデザインしていく力です。一見関係なさそうな情報と情報を組み合わせてソリューションを創り出す。そして、ベースに数理と言語があるように、その過程では色々な人とコミュニケーションが必要です。多様な言語が使えることは重要なポイントです。日本人の価値観だけで何かサービスを作っていこうとしても、今後発展の可能性はありませんので、海外の人たちと色々な価値観をぶつけながらやる学びが必要となります。
 Society5.0は、人間の創造性を重視しています。AIがやれることはAIで、人間は知的な操作や創造的な活動、ワクワク楽しい学びをやろう、そして未来を創る子供たちを育てようということに繋がります。これは一部のエリートに限った話ではなく、一人一人を未来の担い手にするため、色々な学び方を保証できる社会にしたいという思いで政策を作っています。

働き方改革と一億総活躍

 もう一つのキーワードは働き方改革と一億総活躍です。働き方改革で皆さんが思い浮かべるものに「時短」があります。残業を減らすことで、クリエイティブな活動に回す時間が増えることはもちろん素晴らしいことです。働き方改革で、世の中全体がそうなって行き、その結果一億総活躍という言葉が出てくるのです。象徴的なのが、これまで仕事と家庭のトレードオフを迫られてきた女性です。まだまだそういった風潮は根強く、その社会構造を何とかするぞ!ということと、働き方改革は表裏一体なのです。そうするとテレワークという手段が重要になってきます。母親が職場との距離を縮めるにはこのテレワークしかないのです。私も当初テレワークは半信半疑でしたが、いまや全くストレスなく使える環境が出来上がっています。また、高齢者にもプレーヤーとして活躍していただきたいですし、障がいを持っている方にも利用していただきたい。現在、不登校生徒は13万人と公表されていますが、潜在的にはその3倍とも言われています。そういった子も活躍出来るような社会にするため、それを支える学び方の改革が急務と捉えています。
 働き方改革で問われることは一日の時間を自分でコントロールできるかどうか。豊かな人生を組み立てるために、子供たちはどのような育ち方をするべきでしょうか。正解に辿り着くかは別にして、自分に最適な教材も、自分に最適な学び方も、試行錯誤が出来るということです。そして、自分で時間割が作れるかどうか、が大切になります。与えられた時間数をこなす習慣のついた子供は、自立できないし、結果的に勉強も出来ません。また、集めるべき人を集められる力も重要です。集まってもらえるコミュニケーション力の高い人にならなければなりません。そして、多様性の中で常に創造し続けて、夢中になっているものを持たなければなりません。こういったアイテムが、働き方改革やSociety5.0、グローバル化の世界でもマストとなるはずです。
 6月最終週に「今すぐそこにある未来に向けて、フューチャーレディな子供たちを育てよう」という有識者会議の提言が発表されます。ここで言う未来とは2030年といった悠長なことではなく、学校も塾も来年から出来ることは直ぐにやろうというものです。内容的にもこれまでの前提を大きく覆すもので、是非ざわついていただきたいと思っています。

ひとりに一台パソコンを

 子供たちがこれから出ていく社会というのは、物理的に同じ空間にいる対面コミュニケーションには拘らないものとなります。対面コミュニケーションもインターネット空間でのコミュニケーションも等しいのです。文字のコミュニケーションはどうするのか、言語はどうするのかといったような話も出てきますが、コミュニケーションの意味がどんどん変わってくるはずです。相手や場面に応じて自在にコミュニケーションツールを変える必要があります。早いうちから大人と同じような環境に慣れておくことが必要で、「学校におけるひとりに1台のパソコン環境の整備」がその答えの一つです。高速インターネットやクラウド、オンライン会話や動画コンテンツをどのように授業に絡ませるかというような話が当たり前となってきます。ようやくこのニュースが政府方針として出されていますが、経産省と文科省で議論を重ね、いつまでにその環境を実現できるかという結論が今年中に出ることになっています。

学び方改革 ~EdTechで効率的な筋トレとアウトプットを~

 働き方改革は時間の有効活用が基本です。テレワークや兼業は当たり前で、多様性をいかに包摂するかが問われる社会です。時間を有効活用して、価値を埋める力や、色々な人とコミュニケーションする力を身に付けるためには、学ぶ人自身が自立化と個別最適化を目指さなければなりません。このような学びでは、今の一斉一律型の学びからこぼれ落ちてしまうTwice Exceptionalといった子どもたちを掬うことができると考えています。
 グローバル化が進む社会では、外国語でのコミュニケーションが大切ですが、未だに英語教育ではCEFRのような話が続いてしまっています。自分の考えを論理的に魅力的に語ることができるか、そして協働するためにコミュニケーションが取れるかということの方が大切です。一人一人の子供たちが価値を作り出すためには、そうでなければならないはずです。
 本日は外国語教育の方の集まりですので、少し外国語にフォーカスします。私も外国語は学生時代好きでした。ただ、今得意ですか? と問われると、自信を持っては答えられません。社会人で留学もしましたが、今英語で正確に伝えられるかは疑問です。英語のジョークで人を笑わせられません。色々なアクセントにも対応できません。ただ、色々な国の人と話すと、発想の違いだけでなく、価値観に自分とあまり違いが無いことにも驚きます。そんなことに気を遣うのかと思うこともあります。そして、普段思いつかないアイデアが浮かんできます。そのためには、相手の主張を理解し、自分の考えを表現できなければなりません。そうでなければ世界で全く相手にされませんし、そもそも外国語を覚える意味すらなくなります。
 日本の外国語教育では、自分の考えを主張することが出来ません。そもそも、自分が頭で考えていることを、日本語であっても表現できないのが実状かもしれません。英語を喋ろうとするならば、まずは自分が普段考えていることしか表現できません。日常生活の事でも何でも良いので、普通に英語で表現する事から始めれば足りていくのではないでしょうか。しかし、まだまだそういったベースで英語教育が組まれていないので、生産性の低い学び方が横行している気がするのです。
 私も学生時代にラグビーに打ち込みましたが、筋トレ(科学的な練習)と試合の組み合わせは大切でした。試合ばかりでもダメですし、ゲーム形式の練習だけでも伸びていきません。教育の場面でも同じで、EdTechこそが科学的かつ効果的、そして効率的な筋トレになると思います。AI相手の会話の打ち合いの精度はかなり高くなってきていますし、単語や構文選択、発音矯正などはAI相手の方が効率的であることが現実となっています。今後AIへの期待が高まっていくなかで、より積極的に現場に採用されていくでしょう。そして、これまで日本の英語教育にはアウトプットである試合が圧倒的に足りておらず、筋トレばかりやってきました。試合も少し背伸びしながら頻繁にやるべきで、オンライン会話への期待が大きくなっています。

学び方改革 ~英語を英語でやらない~

 経産省の実証授業で、あるソフトを使って高校の英作文の授業を変えてみました。英作文の課題をひたすら海外大学生に送信するのですが、翌日には添削とビデオ解説が送られてきます。そのビデオを見て、また課題を送り返すというサイクルが行われました。1対40の教室では、先生が全員分の添削をすることが出来ませんが、このスタイルであれば先生は動画を用いて更なるアドバイスや解説ができるようになります。よほど効率的ですし、英作文に限らず、ボキャブラリービルディングや構文選択や発音矯正もこれから変わっていくはずです。
 外国語教育は、算数や数学と同じくらいEdTechによる学習スタイルの変換が急激に進んでおり、日本も負けていられません。民間教育の皆さんが培われてきた教育ノウハウにテクノロジーをかませてEdTech化し、それを学校にも取り入れていきたいと考えています。
 また、英語を英語としてやらないということも大切だと思います。例えば、世界の人たちとオンライン環境でロボットを作ろうとしたときに、そこでの会話は必ず英語になります。まさに、STEAM教育に語学の組み合わせが重要だと思える点です。ひたすらにプログラミングやロボット作りをしていれば良いというものではありません。環境や政治問題も同じで色々な議論が英語で交わされるべきです。
 コミュニケーションを通して、ものを作るために学ぶべきです。しかし、そんなコンテンツは学校の先生の力だけでは実現が難しいのです。民間から押し出されない限り実現しないのです。「未来の教室」事業を始めて一年になりましたが、多くのプロジェクトが生まれて、多くの示唆を残してくれました。

事 例:中学校

 個別最適化の事例をご紹介します。東京の中学校でインターネットの繋がったパソコンをひとり1台用意しました。残念ながら、意欲の高い学校でもインターネット環境はまだまだでしたので、Wifiを持ち込みました。それぞれ自分のスピードで課題に取り組むので効率的に学習が進んでいきます。 
一番遅かった子でも、通常の半分の時間で単元が終わり、次学年の学習に進むことが出来、効率的に勉強が出来ることが実証されました。間違った問題があっても見直すよう指示が飛ぶようになっているなど、戻ることも出来るので、分からないまま進むことがありません。効率化された効果も見えてきて、プログラミングで遊ぶ時間も出てくる。習った定義が実生活でどう活かされているかというような応用に発展するのです。中学生であれば速度・加速度の話や、高校生ではドローンの空間座標の話なども出ました。

事 例:小学校

 ICTの導入が自習室のような教室をもたらすと思う方もいますが、静岡県の小学校のプロジェクトでは、パソコンを目の前にしながらも一人でこもらず、皆で助け合う姿を目の当たりにしました。教室は賑やかで、良く喋り、助け合う。一方で、先生は一人一人の理解度が目の前のタブレットで分かるので管理も出来ています。自分のペースで学習を進めるA層の子はどんどん進めていき先生からまわりを助けるような指示が出され、その社会的責任を果たしていきます。D層の子は、自分のペースで進めながらも、まわりに自分から助けを求めていきます。まだまだICTが冷たいものだと思っている人が多いのですが、ICTは全員を包摂する道具で、温かい環境を作れるものです。そう感じていただきたいですし、そのように意識の転換を図っていきたいと思います。

事 例:農業高校

 農業高校のスマート農業とロボティクス、農業とloTというテーマで、センサーで圃場の状態をどのように把握するという取り組みが行われました。まずはセンサーとは何? というところから始まります。センサーを分解して仕組みを知るわけです。そして、センサーで得た限られたデータで圃場の状態を分析していきます。ただ、実際にはスマート農業はまだまだ改良点も多く、今のIoTセンサーで得られるデータで農業をすることは出来ないのです。もっと色々なことが必要だということを知ることそのものが大事なのです。人手不足に気付く生徒がいればロボット開発に繋がり、将来的にトラクターをどのように自動運転させるかということに行き着くようになります。このようなプログラムは全国に365校しかない農業高校だけに提供されるプログラムではなく、普通科の高校生も自由に出入りできる、あるいは単位補完がされても良いと思います。そうすると、農業高校が地域のSTEAM教育のセンター的な役割を果たすことになるかもしれません。それは商業高校も工業高校も一緒です。
 これからは学校の統廃合も起きてくるので、STEAM科を軸に据えた新しい普通科を作ることが私の描くもう一つの絵です。そのような場で、遠く離れたアメリカ等農業大国の高校生や大学生とやりあうべきだと思います。そうすると使われるのは英語や中国語となり、初めて英語を勉強する意味が出てくるのです。

事 例:商業高校

 もう一例は社会課題のプログラムですが、徳島商業高校のビジネス研究部という面白い部活で行われたカンボジアの渋滞問題があります。高校生が渋滞の構造を知るために、カンボジアの道路の真ん中に立ち、渋滞のネックであるラウンドアバウト(環状交差点)でデータを取りはじめました。数理モデル化する前に、データ以前に運転マナーが悪すぎるという事実に彼らは気付いたのです。 
 交通マナーの教育、ルールがどうなっているかという側面に目が行くわけです。そうなると、数理モデルに基づいて土木インフラとしての道路をどう設計すべきかという話もですが、法的なものや倫理的なものもどうするかという社会システム発想が出来るようになるのです。カンボジアの高校生とのオンライン会話は通訳付きのクメール語でしたが、英語で行えたらもっと良かったと思っています。

教師の役割

 教師の役割はどのようなものになるのでしょうか、というご質問ですが、実証授業をやってくださった先生方は立派にコーチ的役割を果たしてくれました。本当に講義が上手い人というのは、もはや才能でしかありません。そのような才能が無ければ良い教師でないという基準自体がおかしいのです。動画は講義が上手な方に任せれば良いのではないでしょうか。事実、大学の授業も動画コンテンツを配信するように変わってきています。毎年同じ板書をし、同じ内容の授業を行う労力を別に使えるようになります。そもそも、生徒の探究心に伴走するためには、教師も探究者でなければならないのではないでしょうか。

STEAM教育とは

 学びのSTEAM化は、Science, Tech, Engineering, Art, Math を指しています。STEMとArt(リベラルアーツ)が組み合わさり、「創ると知るが循環する学び」を作っていきたいと考えています。これまで提唱されてきたSTEMScience, Tech, Engineering, Math)の第一歩目として、プログラミング教育が来年から始まります。ただ、プログラミングやロボット作りをしていれば良いというものでなく、何のためにやっているのか、という目的がなければどこかで行き詰まります。それがArtを加えたSTEAM (STEM×Art)の考え方なのです。より幸福な社会やサービスを創ろう、新しいサービスを創ろうというような発想が無いといけないのです。その組み合わせになる教育をどのように作ろうかという話になり、未来の教室ではメンバーが本当に参加したいと思うプロジェクトだけを選び、採用してきました。
 これらのプログラムは、まだ部活や一部の教科、総合の時間などでしか行えていないのですが、今後、月曜から金曜すべての全時間割で再編集が課題になっていくのだと考えています。数学や英語、社会、理科など、インプットの時間だけでなく、アウトプットの時間をもっと使えるようにしたいのです。そういった時間割編成をどのように作れるか、経産省と文科省が協働してガイドラインやモデルを作成していくことになっています。
 STEAM教育を進めていく上では、あの学校では出来て、この学校では出来ないということがあってはなりません。まずは、オンラインのデジタルライブラリを作りたいと考えています。アメリカの公共放送PBSが持っているラーニングメディアという番組を一つの参考にしています。そこでは、ボーイング社が飛行機の構造や未来像、飛行機のイノベーションに関することに加え、授業用のサポートマテリアルやカリキュラムのガイド単元、発展学習用のヒント集なども提供されています。さすがにここまで揃っていれば学校でも使いやすくなってくる。日本でもJAXAの宇宙教育センターがSTEAM教育のホームページを作っていますし、JALもスクールを立ち上げています。こういった分野では、宇宙航空産業がかなり先を行っています。他の企業もこうなってくると面白いですが、企業にとってコンテンツ制作は簡単なことではないからこそ教育産業の出番だと思うのです。企業のもつ課題をいかに学習コンテンツにしていけるのか、そして外国語をどのようにかませていけるのか、という話も出来ると思います。

民間の教育ノウハウをぜひEdTechに

 未来の教室のキーコンセプトは「学びのSTEAM化」と「学びの自立化・個別最適化」です。
 未来の教室は、色々な学び方があるということを示していく実証事業ですが、あと3年は行いたいと思っています。その中で、フルパッケージでカリキュラムがガラッと変わる学校も作っていきたいと考えています。こういう姿に対して、民間教育産業からも新しい学びのコンテンツやビジネスモデルが生まれてくることを期待しています。 今年も公募をかけますので、全外協の皆様からもコンテンツへの支援要請の声が挙がることを願っています。

リ ン ク

★「未来の教室」ビジョン(「未来の教室」とEdTech研究会 第2次提言)
→ https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190625002/20190625002.html
★ 未来の教室 LEARNING INNOVATION   
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事務局より

 『Society5.0・働き方改革・一億総活躍の社会と「未来の教室」』では、経済産業省 教育産業室 浅野大介室長にご登壇頂きました。
 Society5.0の時代を生きる子どもたちの学びをどう作り上げていこうとしているのか、事例をあげたお話は大変わかりやすく、また、ICTは使い方次第で全員を包摂する温かい環境を作ることができるのでぜひ意識改革を……という言葉が印象に残りました。
 浅野先生、お忙しいところご登壇くださりありがとうございました。

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