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ジョイ・イングリッシュ・アカデミー

第14回 「文法の日」セミナー

今や全国で展開されている「⽂法の⽇」。発祥の地・ジョイでは、阿部⼀先⽣をゲストにお迎えしました。阿部先⽣が「⽂法の⽇」に登場するのは今回が5度目。「⼤⾕選⼿が⼆⼑流なら阿部先⽣は九⼑流」と浦島学院⻑が紹介し、まさにミスター英⽂法と呼ぶにふさわしいゲストということで参加者の期待も⾼まります。また、ここ最近では珍しくハンドアウトが配布されなかったため、参加者たちは常に阿部先⽣に目を向けることに。そのせいか、参加者たちの集中⼒がひしひしと会場に⽴ち込めていました。

日 時: 2019年5⽉19⽇(⽇)14:30〜18:00
会 場: ジョイ・イングリッシュ・アカデミー A館(帯広市⻄17条南5丁目11-14)
講 師: 阿部⼀ 先⽣
(英語総合研究所所⻑、元獨協⼤学外国語学部教授、元NHKラジオ「基礎英語3」講師)
概 要

【初級】⾝体で覚える「表現するための基本⽂法」[14:30〜16:00]

【対 象】ステップ1・2、英検4級〜3級程度、中学校の英⽂法レベル

 「学校文法というのは、理解する側も大変だし、教える側も指導が難しいんですよね」。そんな阿部先生の言葉で幕を上げた初級向けセミナー。この言葉に、うなづく参加者も。阿部先生によると、今の指導要領は音声重視。英語は音が大事なのに対し、日本語は文字言語。素直で覚えやすい言語であるため、特徴さえつかめればある程度は話せるようになるのだそうです。そのぶん書くのが難しく、日本語は話せても書ける人はなかなかいないのだとか。英語と真逆なのが納得できました。”学生時代にやったことを忘れてしまった”。”読んだり書いたりはできるけれど話すのに慣れていない”。ジョイの社会人コースを訪れる新入生からよく聞かれることです。そこで救世主・阿部先生の定番、「文法をペットとして飼い育てるように付き合っていきましょう」。文法のおかげで言いたいことがスムーズに、ラクに言えるようになるのです。知識をつけるだけでなく、口から出るようにしなければ。そのためにはどうしたらいいのか、ということで詳しい解説へと進みます。

1 冠詞を考える

 阿部先生はいきなり、おそらく参加者のほとんどが認識していた a/an の使い分けの法則を壊すところから始めました。ミスター英文法、初級から痛烈なライナーで出塁です。すぐに実践編へと移り、a watermelon と watermelon との違いを具体例を挙げて解説。また、不可算名詞の場合の冠詞についても解説は及び、参加者の頭の中でイメージが出来上がっていきます。

2 前置詞を考える

 基本の3つ、on/in/at について「東京で会う」ことを表現する際のそれぞれの違いを、阿部先生が具体的に日本語で説明。また、本来は前置詞である to を、”a key to the door” を例に、身体を使いアクションを伴って意識してみます。to の持つイメージを参加者は掴めたでしょうか。

3 動詞を考える

 これぞ文法。knock the door/knock on the door の違いに驚いた参加者たちから笑いがこぼれました。続いて chew on the pencil/chew the pencil、eat on the leaf/eat the leaf でも笑いが。ここで参加者たちは文法の力や大切さをはっきりと理解したことでしょう。「ちゃんと説明するために、言葉ってうまくできてるでしょう」と微笑む阿部先生の傍に、文法という名のペットが尻尾を振る姿が見えた気がしました。
 また、未来的な表現をするのが to不定詞であり、いくらでも繋げられて便利なものとした上で阿部先生は、中学生の書いた文章を見せてくれました。言いたいことが完璧に伝わる、素晴らしい英文でした。さらにこの to不定詞とは商品のパッケージ等にもよく書かれていると阿部先生は言い、実例をいくつか挙げます。「何かをする動作と自分が向かい合っているわけです」。参加者たちが使う to不定詞は今後きっと輝いてくることでしょう。

 初級の締めとして、「文法って決して難しくはないんです。大事なのは、声を出して言うことです。さらにいいのは動作、身体と連動させて声を出すこと。口が慣れていき、音にも慣れてきます」と阿部先生。最後に、スポンサー提供の文法学習書を懸けた阿部先生とのじゃんけん大会が行われ、初級は閉幕しました。

【中級】「ひとりごと学習」でモノにする音声表現文法とは?[16:30〜18:00]

【対 象】ステップ2〜4、英検準2級〜2級程度、高校1年生の英文法レベル

 英語を話す相手がいない学習者にとって、ひとりごと学習は効果があるのでしょうか。なんと阿部先生、6年越しで研究したそうです。結論。効果は、あります! 持っている知識(grammar)をどう生かしていくか。これが grammaring=文法力なのです。そんなふうに、初級から引き続き受講する参加者が四分の一を占める中級講座は始まりました。

1 指示詞を考える

 ここでは that に注目です。”What is that?” への答え方として、従来の学習では that+is ですが、音声表現文法としては that’s。外国語として英語を学ぶ他の国々に日本が負けているのはここです、と阿部先生。加えて、距離と範囲を基準に this と that を解説し、それらが表現できる事柄の可能性も述べました。文法といいつつも型にはめず、自分の気持ちで使いこなすことこそが grammaring なのです。

2 ing形を考える

 She runs everyday./She is running. との違いを例に、ing が使えない動詞や ing がつくことで名詞になるものを紹介。build(動詞)と building(建物)は中級レベルの学習者ならすでに使っている単語でしょうが、ふと立ち止まって着目してみるのが、阿部先生ならではの文法の日と言えるでしょう。

3 完了形を考える

 ここで阿部先生が吠えます。「用法を分けるのは意味がない! 日本人は自制に弱いけれど、英語では重要なんです」。参加者たちはドキッとしたことでしょう。have のある場合と、have のないただの過去形の場合とでイメージがどう変わるのか、解説に深く耳を傾けます。そこにドラマが生まれる have。なるほど、と聞き入る参加者たちでしたが…「“あぁそうですか” じゃなく、自分で言えるようにならなきゃダメですよ」と笑いながら阿部先生。そうです。ペットを飼い、愛で育てるのはみなさん自身なのです!

4 関係詞を考える

 さすが阿部先⽣、学習者のツボを突いてきます。これも中級レベルがぶつかる壁のひとつなのは間違いありません。そんな参加者たちに阿部先⽣は、「who/which/that。これらは無理して使う必要はないですよ。例えば、I met a beautiful girl.(She is beautiful︓話し⼿の感覚) と She was working on a computer.(She is a computer teacher︓事実そのもの)というような2つの⽂章で書くことにまずは慣れること。そのままでは幼さがあるので、2つの⽂章を “I met a beautiful girl who was working on a computer.” と関係詞で繋いでみると、表現に期待感を持たせることができる」と説明。続いて述べた、書く場合によく使われるこうした関係詞を⼝に出すときの注意点には、参加者たちは盛んにメモを取っていました。

 中級の最後に阿部先⽣は、まずはストーリーや情景描写を会話形で、かつ指⽰詞を⽤いて書いてみることを勧めました。⽂法書でよく⾔われる⼤切なこと、”Be a fool. Be creative.” を挙げつつ、 「”間違えてもいいからやってみよう” はもう古いんです。”もっともっと間違えろ。そして前進”、これが現在の⽂法の学び⽅です」。さらに、書くことを習慣化させ、声に出して読む、つまり⼝から出すことが⼤切、と阿部先⽣。⽇本⼈は呼気⼒が弱いので特に重要なのだそうです。

 最後に、ミスター⽂法から⼼強い⾔葉が参加者たちに贈られました。「練習すれば誰でもできるようになるのが英語なんです。決して特殊技能ではないのです。できないのは、声を出していないから。主⼈公になっていないから」。今⽇学んだことを参考に、さっそく何か取り掛かった参加者も多いことでしょう。英語を勉強として考えているのはダメ。⽇常⽣活に英語をどれだけ密着させられる
か、と阿部先⽣は念押ししていました。そうですね、⽂法はペット。勉強の対象でもテストがあるわけでもありません。毎⽇お世話が必要で、可愛がらなければ懐きませんからね。中級でもじゃんけん⼤会を⾏いましたが、初級・中級いずれ
もセミナー後は阿部先⽣の著書を買い求める参加者の⻑蛇の列が。後⽇、 「⽂法というから敷居が⾼いイメージがあったけれど参加してみてよかった。⾃分にも使えるものがあった」「阿部先⽣の説明は分かりやすかった」「普段なかなか⽂法についてじっくり考えることはないから勉強になった」などという声をいただきました。参加してくださったみなさま、阿部先⽣、ありがとうございます。みなさんの⽂法という名のペットが、すくすく元気に⼤きく育ちますように。

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